一匹狼大学生クリの日常

俺はこういう人間だ

『マチネの終わりに』 胸が締め付けられた 人間の本質を突いた 恋愛小説の傑作 書評

 

マチネの終わりに (文春文庫)

マチネの終わりに (文春文庫)

  • 作者:平野 啓一郎
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2019/06/06
  • メディア: 文庫
 

 

こんなにも読み終わりがジーンとする小説がありましたでしょうか。

 

そのジーンというのも、

はぁ〜感動した〜

とか

キュンキュンした〜

といった類の

青春恋愛話みたいなものから生じるハッピーエンド♫ スッキリ💩

というものではなく

 

ヒーローとヒロインの潔さ、誠実さに気持ち良さを覚えつつも、

両者の心の裡、歩んできたそれぞれの数年間のすれ違いを思うと、本当に切なさを痛感してしまう。

こういった、大人の恋への憧れ、はたまた、運命の残酷さ、様々な感情が交錯するジーーーンなんですよ。

全く、最高だった。とか、悲しい。苦しい。といった単純な反応では済まないですね。。。

 

読んだ人ならこの気持ち分かりますよね?

 

まぁとにかくこの小説は累計発行部数が50万部を突破している(2019年9月時点)という実績からも素晴らしいですし、実際読んでみた者としても、並の小説とは一線を画しているように感じました。

 

ということで、今回はこの『マチネの終わりに』の見所と僕の全体を読んでの感想をお伝えしようかなと思います。

 

 

あらすじ(導入部〜中盤まで)

この物語の主人公である天才ギタリストの蒔野と、ヒロインである国際ジャーナリストの小峰という2人の、まぁ言ってしまえば人生における勝ち組、花形と目される大人同士の恋愛話です。年齢はアラフォーでして。

出会いは東京での蒔野のコンサートに、仕事の関係で小峰が赴きまして、そこで蒔野は一目惚れ。その後、公演後の飲み会で同席することになります。そこで、小峰も小峰で、彼女の複雑なルーツに基づく心境を、知的で非凡な存在であるからこそ理解することのできる蒔野に好意を覚える。そして、お互いにその時の会話が心から楽しかった事を回想し想いを募らせていきます。

しかし、小峰は婚約を交わしているフィアンセがおり、一方の蒔野も専属のマネージャーから本人は鈍感であるが好意を抱かれている。という境遇なのです。これらが後の展開で重大な岐路に立ちはだかることになるのです。

そして、二度目の対面は小峰が紛争地の取材から無事パリに帰還し、蒔野の海外公演の機会にパリでの再会。そこでは、ぎこちない恋の駆け引きからの遂に蒔野からの想いの告白。世間体を放棄することになっても彼と共に歩みたいと決断した小峰。

ところが、不遇な出来事が重なりに重なって、心痛むすれ違いが生じ、異なる人生を歩むことになる。という切ない運命が待ち受けているのです。

とりあえずあらすじはここまでに留めておきます。

 

彼ら2人は物語を通じて計3回しか対面しないのですが、その3回目の再会がねっ(T ^ T)

 

見所

全体を俯瞰してみると、話の展開は王道の恋愛小説の流れです。当然ながら2人の間に割って入ってくる第三者の存在があったり、幸せをもう少しで掴めるというところで生じる急な出来事。恋愛面の展開だけみてもハラハラドキドキ楽しめる流れになっております。

しかし、恋愛の内容がこの小説の特徴的な点で、何度も言いますが理性ある真っ当な大人だからこそのできる恋愛というところに尽きるんです。ヒーロー、ヒロイン以外に登場する人物はいたってよくいる人間。自分の欲や嫉妬心のままに行動をする。確かに人それぞれで、生まれ持った容姿や能力、育ちの違いなどから必然的に生ずる格差は存在するので、満たされない欲望への苛立ちや、自分より輝いている他者への嫉妬が湧出してくる事は仕方がないことなのかもしれません。

ただ、それゆえに、相手の事を本気で思いあうがため、自分の欲や本音を押し殺す蒔野と小峰の大人の振る舞いや行動が一層魅力的に映しだされているように感じました。一読者として、尊敬の念を抱きますし、こんな考えが取れる大人になりたいと思いました。一種の大人の恋愛バイブル書といっても過言ではないのかなと思います笑

 

また、恋愛以外にも見どころはございまして、それは、登場人物の会話や考えが高尚といいますか、考えさせられる点、知識として得られる点が所々に散りばめられているんです。

一つ例を引っ張り出してくると

『人は、変えられるのは未来だけだと思い込んでいる。だけど、実際は、未来は常に過去を変えているんです。変えられるとも言えるし、変わってしまうとも言える。過去は、それくらい繊細で感じやすいものじゃないんですか?』

これは実際に蒔野が言ったセリフですが、このような登場人物の哲学めいた考えが会話中に何個も出てきます。これは物語中だけで完結するような考えではなく、僕たちの現実の日常生活の中でも参考になったり、見落としがちな考えなくてはならないものであったりします。

他にも、ノンフィクションの歴史の話や経済学の話等が出てきたりと知識欲をそそられる側面もありまして、理解できない自分に焦って勉強せねばってなるし、なんか小峰の聡明さに憧れを抱く流れで、『俺ももっと勉強して賢くなろ』って思うんじゃないでしょうか笑(僕はすぐ影響される人なので)

 

感想

一つの決断には何かを捨てる妥協がどうしてもつきまとってくるのだなぁと痛感させられました。そして、恋においては特に、自分の欲を最優先に行動したところで結局それは独りよがりの行動に過ぎなかったり、その場は切り抜けられたとしてもどこかで最終的に後ろめたさ、罪悪感に駆られる事になるというのも学びになりました。そう考えると、一つ一つの行動の選択は、たとえ即座に起こる結果が自分の希望にそぐわないものであっても、自分が自分の行動に恥はないと思える行動を取っていくのが一番なのかもしれないと思いました。『過去は未来の行動次第で変わりうるもの』という言葉は僕も好きな一言ですが、起こした行動を帳消しにすることは不可能であるので。

 

マチネの終わりに (文春文庫)

マチネの終わりに (文春文庫)

  • 作者:平野 啓一郎
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2019/06/06
  • メディア: 文庫